『ドリーム』レビュー|差別と偏見を超え、希望を打ち上げた“知られざる英雄たち”の物語

洋画

NASAの舞台裏に、こんなにも胸を打つ真実があったとは――。
映画『ドリーム』は、人種差別と男女差別が色濃く残る1960年代アメリカを背景に、3人のアフリカ系アメリカ人女性が宇宙開発を支えた実話を描いた物語です。

「夢を追いかけることの意味とは?」「壁を打ち破る力とは?」
観る者に数々の問いを投げかけながら、深い感動と勇気を与えてくれる本作の魅力を、映画と向き合い続けた13年の視点で、徹底解説いたします。


作品情報

  • 原題:Hidden Figures
  • 監督:セオドア・メルフィ
  • 脚本:アリソン・シュローダー、セオドア・メルフィ
  • 主演:タラジ・P・ヘンソン、オクタヴィア・スペンサー、ジャネール・モネイ
  • 公開年:2016年
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、伝記、社会派ドラマ

あらすじ

舞台は1960年代、アメリカ・バージニア州のNASAラングレー研究所。
天才的な数学の才能を持つキャサリン・ジョンソンは、アフリカ系アメリカ人であること、そして女性であることから多くの偏見にさらされながらも、宇宙計画の最前線である有人宇宙飛行計画チームに配属されます。

彼女と共に働くのは、コンピュータ部門のリーダーでありながら昇進を妨げられているドロシー・ヴォーン、そしてエンジニア志望のメアリー・ジャクソン。
3人はそれぞれの分野で不屈の意志をもって壁を乗り越え、アメリカ初の有人宇宙飛行「マーキュリー計画」を成功に導いていきます。

歴史に隠されていた“影の立役者たち”が、いま静かにスポットライトを浴びる――。


人生観が変わるポイント

数字で世界を変えた女性の勇気と知性

キャサリンは、差別的な環境の中でもその数学的才能を発揮し、ジョン・グレンの軌道計算という極めて重要なミッションを成功に導きます。
「黒人女性がこんなにもNASAを支えていたなんて知らなかった」という視聴者の驚きと同時に、「才能には人種も性別も関係ない」と胸に刻まれる感覚があります。

彼女の姿は、「どんな立場にあっても、実力と信念で道を切り拓ける」ことを力強く伝えてくれます。

“見えない壁”と向き合い続ける勇気

ドロシーが直面するのは、上司やシステムからの理不尽な評価や不遇な扱い。しかし彼女はあきらめることなく、自らプログラミングスキルを学び、新しいIBMコンピュータの運用を先導します。

「学びを止めないことが、未来を変える」。このメッセージは、現代に生きる私たちにとっても非常にリアルで、勇気を与えてくれるものです。

“初めて”をつくることの偉大さ

メアリーは、エンジニアになるために裁判所で白人専用の夜間学校への入学許可を直談判します。そのシーンは、個人の夢が社会の構造を揺さぶる瞬間として非常に象徴的です。

「最初の一歩」は常に孤独で、時に痛みを伴います。しかし、その一歩が誰かの未来を明るくする――。メアリーの勇敢な挑戦に、胸が熱くなります。


印象に残るセリフとその意味

「彼女が答えを持っているなら、彼女に答えさせればいい」

これは、キャサリンの才能を信じたNASAの宇宙飛行士ジョン・グレンの言葉です。
立場やルールに縛られず、「誰が正しいか」ではなく「何が正しいか」に目を向ける姿勢が、どれほど組織や社会にとって重要かを強く訴えかけます。

この一言がなければ、もしかすると歴史は違っていたかもしれません。
だからこそ、このセリフは時代を超えて私たちに問いかけてくるのです。


まとめ

『ドリーム』は、観る人すべてに勇気を与える作品です。
描かれているのは過去の物語ですが、そこで示される信念、挑戦、連帯の力は、今を生きる私たちにも直結します。

特別な誰かではなく、“普通の女性たち”が努力と知恵で道を切り拓いたこの実話は、「自分にもできるかもしれない」と思わせてくれる強さを秘めています。

まだ観ていない方には、ぜひこの映画をおすすめします。
きっとあなたの心に、新たな火を灯してくれることでしょう。

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