『おくりびと』レビュー|死を通して生を見つめ直す、心震える傑作

邦画

人の死に向き合うことで、私たちは「生きるとは何か」を深く考えさせられます。映画『おくりびと』は、納棺師という職業を通して、命の尊厳と人とのつながりを描いた珠玉のヒューマンドラマです。
「死」をテーマにしながら、観る者の心を温かく包み込み、涙と共に深い感動を届けてくれるこの作品。あなたは、大切な人を見送るその瞬間に、何を思うでしょうか?

作品情報

  • 原題:おくりびと
  • 監督:滝田洋二郎
  • 脚本:小山薫堂
  • 主演:本木雅弘、広末涼子、山崎努
  • 公開年:2008年
  • ジャンル:ヒューマンドラマ

あらすじ

チェロ奏者として夢を追っていた主人公・大悟は、所属していたオーケストラの突然の解散により失業。音楽の道を諦め、妻と共に故郷・山形へ戻ります。職探しの中で「旅のお手伝い」という曖昧な求人広告に惹かれ、訪れた先で彼が出会ったのは、亡くなった人を棺に納める「納棺師」の仕事でした。

初めは「死」に触れることへの嫌悪感と世間の偏見から戸惑う大悟でしたが、仕事を続ける中で、遺族と故人の最後の別れに立ち会う納棺の儀式に、次第に深い意味と尊さを見出していきます。そして自身の過去とも向き合うこととなり、人生に大きな転機が訪れるのです。

人生観が変わるポイント

「死」を通して見えてくる「生」の価値

本作は、死を描きながらも「生きること」の意味を私たちに静かに問いかけてきます。納棺の所作一つひとつに込められた敬意と慈しみ。その姿に触れるたび、亡き人とのつながりの深さや、人の命の重みを痛感させられます。「人は亡くなったあとにも、誰かの手で大切に扱われるべき存在なのだ」というメッセージは、多くの視聴者の心を揺さぶることでしょう。

職業の尊さを見つめ直す視点

納棺師という職業に偏見を抱く人々とのやり取りは、「世間体」や「仕事の価値」を見つめ直す大切なきっかけになります。大悟自身が葛藤しながらも、納棺の儀式に真摯に向き合う姿勢を見せ続けることで、視聴者にも「本当のプロフェッショナルとは何か?」を問いかけてきます。この映画は、どんな仕事も誇りを持ってやり遂げることの意味を、静かに、しかし力強く伝えてくれるのです。

家族との再接続と和解

大悟は幼い頃に自分を捨てた父への複雑な感情を抱えたまま生きてきました。本作の終盤、思いもよらぬ形でその父と再会する場面は、言葉では語り尽くせない感情の渦が広がります。赦し、和解、そして別れ。この瞬間に流れる静かな涙は、観る者の心に深く刺さることでしょう。

印象に残るセリフとその意味

「人は、誰でも死にます。でも、その人にしてもらったことや、言葉は残るんです」

このセリフは、大悟が仕事を通じて「死」を受け入れる覚悟を持ち、「別れ」の中に「つながり」があることに気づいた瞬間に語られます。
たとえ亡くなっても、人は完全に消えてしまうわけではない。その人と過ごした時間や記憶が生きている限り、心の中に息づき続ける。そう思えることで、死に対する恐れが和らぎ、今を生きることへの感謝が芽生えるのです。

まとめ

『おくりびと』は、「死」というタブーに真っ向から向き合いながらも、温かく優しい眼差しで「生きることの尊さ」を描いた傑作です。
日本人の美意識や死生観が繊細に表現されており、ラストシーンでは静かな感動が心の奥深くにまで染み渡ります。

一人でも多くの人に、この映画が届ける「命の尊厳」のメッセージが届いてほしい。そんな願いを込めて、自信を持っておすすめします。

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