『心が叫びたがってるんだ。』レビュー|言葉にできない想いが、音楽にのって届くとき

アニメ映画

「本当は、ずっと伝えたかったんだ」
そう感じたことはありませんか?
映画『心が叫びたがってるんだ。』は、心に閉じ込めてしまった想いと、言葉にできない不器用な優しさが交差する青春群像劇です。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のスタッフが再集結し、再び“伝えること”の重みと大切さを、観る者の胸に深く刻みつけます。

言葉を失った少女、心を閉ざした少年、傷を抱えた仲間たち――
音楽が、彼らの「叫び」をそっと包みこむとき、あなたの心もまた、優しく震えることでしょう。

作品情報

  • 原題:心が叫びたがってるんだ。
  • 監督:長井龍雪
  • 脚本:岡田麿里
  • 主演(声の出演):水瀬いのり、内山昂輝、雨宮天、細谷佳正
  • 公開年:2015年
  • ジャンル:青春アニメーション、ドラマ

あらすじ

幼い頃、何気なく口にした言葉が原因で、家族がバラバラになってしまった成瀬順。それ以来、彼女は“言葉”を封印し、心を閉ざして生きてきました。
ある日、学校の「地域ふれあい交流会」の実行委員に選ばれた順は、同じく心に傷を抱えた坂上拓実、仁藤菜月、田崎大樹とともに、ミュージカルの企画を担当することに。

声を出すことができない順が、なぜミュージカル?
「伝える」ことから逃げてきた4人が、舞台の準備を通して向き合うのは、過去の自分と、本当の気持ち。
やがてそれぞれの“叫び”が、音楽となって広がっていきます。

人生観が変わるポイント

傷つけてしまった「言葉」と、救ってくれる「言葉」

順は「言葉のせいで家族が壊れた」と思い込み、声を発することに強い恐怖を抱えています。
けれど、物語を通して彼女は気づいていきます。
本当に人を傷つけるのは“言葉”そのものではなく、「伝えようとしないこと」かもしれない、と。

誰かを大切に思うからこそ、言葉を選び、震えながらも伝えようとする勇気。
それは、観る者の胸に優しく、しかし確かに響きます。

ミュージカルという「逃げ場」であり「希望」

順にとって、音楽は“声を出さずに心を伝える”手段でした。
歌なら、心の叫びを届けられる――そう信じた彼女の歌声には、まっすぐな想いが溢れています。
音楽という表現方法の力、そしてそれを通して仲間と心を通わせていく過程は、観る側にも「伝える勇気」をくれるはずです。

誰もが“叫びたがってる”心を持っている

坂上も、仁藤も、田崎も、それぞれに悩みや過去を抱えて生きています。
「うまく言えない」「わかってほしいけど、伝わらない」――そんな葛藤は、視聴者自身の心にも共鳴するはず。

この映画は、ただの“青春もの”ではありません。
誰もが心の奥に秘めた“叫び”を抱え、それをどう扱って生きていくか。
その繊細な問いかけが、全編を通して丁寧に描かれているのです。

印象に残るセリフとその意味

「言葉って…言わなきゃ、伝わらないんだね。」

このセリフは、物語のクライマックスで順が絞り出すように語る一言。
「伝えるのが怖い」と思っていた彼女が、初めて心の奥の想いを吐き出した瞬間です。
簡単なようで、誰もが逃げてしまいがちな“当たり前の真実”。
それを、ひとつの勇気として描いたこの言葉に、多くの視聴者が心を打たれたはずです。

まとめ

『心が叫びたがってるんだ。』は、ただの感動アニメではありません。
「言葉にできない思い」を抱えるすべての人に寄り添い、その一歩を踏み出すきっかけをくれる作品です。

自分の想いを、誰かに届けたい。
でも、うまく言えない。
そんな風に感じたことがある人にこそ、この映画を観てほしい。

きっと、観終わったあと、あなたの中にも「本当は伝えたかったこと」が、そっと浮かび上がってくるはずです。

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